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連休中に来て頂いた方すみませんでした。休みの日はあんまりネット環境に いないんです。自宅は環境劣悪なもんで。 で何をしてたかと言いますと、間もなく発売されるミクロアクションの予習 という事で「バットマン・ビギンズ」を観て来ました。 タイトル通り今回は「ブルース・ウェインはなぜバットマンになったか」と いう物語の発端を描く作品であり、同時に過去の作品とは決別したリニュー アル版と考えた方がよさそうです。過去の作品を引きずって観ると違和感を 感じると思いますので。 ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)の父ウェイン卿はゴッサム・ シティ一の名士で、荒廃する市を何とか建て直そうと考えている善意の人だ ったが、ある日妻と子どもであるブルースと共にオペラを見に行った帰り、 貧困層の暴漢に襲われ、妻共々命を失う。ブルースは自分を責める。オペラ の内容が自分が以前に落ちた古井戸の中でコウモリに襲われるという体験を 思い起こさせるものだった事で恐怖のあまり両親に出ようと言ったために起 こった悲劇だったからだ。 彼の心の中には幼い日のコウモリの恐怖体験と両親の死という強いトラウマ が残され、犯罪者を憎む心、やり場のない怒りを抱えたまま自らも犯罪の世 界に堕ちる事でその心理を学ぼうとするが、そこで謎の男デュカード(リー アム・ニーソン)と出会い、彼に導かれ雪と氷に包まれた秘境で己の内なる 恐怖を克服し悪と闘うべく修行を始める。彼らの導師となるのはラーズ・ア ズ・グール(渡辺謙)。ラーズは「影の軍団」を組織し、堕落した世界は力 より糺すすべきだと考えブルースもその一員となるよう強く迫るが、力によ る正義を認めないブルースは戦いの末にラーズを破り、ゴッサム・シティに 戻る。そこは以前にもまして荒廃し、汚職と犯罪に塗れた街になっていた。 しかしそんな街でも幼馴染で今は検事補になったレイチェル(ケイティ・ホ ームズ)や市警の警官ゴードン(ゲイリー・オールドマン)が悪に立ち向か っているのを知ったブルースは、執事のアルフレッド(マイケル・ケイン) やウェイン社の老科学者フォックス(モーガン・フリーマン)の協力を得て 自らの恐怖のアイコンであるコウモリを模した姿に身を包んで、犯罪者と闘 う事を誓うのだった。 えっと導入部でもこれだけ長いわけで、正直2時間半は長い気もしました。 しかも肝心のバットマンは最初の1時間は全く登場しませんので、見に行く 方はそれを念頭に置いてください。退屈はしないんですけどね。 監督であるクリストファー・ノーラン(「メメント」「インソムニア」)は 徹底的にこのドラマをリアリズムで描こうとしており、そういう意味ではサ ム・ライミの「スパイダーマン」と対極に位置しています。「スパイダーマ ン」はむしろ積極的に漫画的である事を肯定した世界観を持っており、その 中で主人公達は極めて人間くさいドラマを形作るわけですが、ノーラン監督 は漫画的なるものを全て捨てたうえで、「如何にして彼はコウモリの扮装を して悪と闘うヒーローとなり得たか」という素材のキモを大マジメに描き出 します。僕のようにスパイダーマンの映像世界に馴染めなかった人間には、 「バットマン・ビギンズ」の世界は馴染みやすかったですが、ブルースが自 分でコスチュームを手作りしたり、バットマンの仮面を(自社の経済力を使 って!)中国に大量生産に出したり、元々軍事車両だった会社の持ち物のビ ーグルを黒塗りしてバットモービルにしたりする世界にはどうもついて行け ないな、という人もいるかもしれません。故にこの世界では「ジョーカー」 や「ペンギン」等という怪人チックな悪役は登場しません。原作キャラの 「スケアクロウ」もそれなりの意味付けを持ってこの世界に登場してきます。 冒頭一時間を占めるラーズ・アズ・グール一派のストーリーはその後物語の クライマックスにも関係してきます。ラーズ一派は犯罪や悪行で被害を受け た者は己の中の恐怖を自らに取り込み(まぁダークサイドですな)報復する 事こそ是とする連中でして、対するブルースはしかしそれは正義ではなく自 己満足にしかならない、本当の正義はそうではない、と自ら信じる正義を貫 こうとするわけですが、物語のラストで、ゴードン警部はバットマンに言い ます。正義の側が強くなれば悪の側はそれに対抗してより強くなる。その繰 り返しだと。しかしそれでも、正義を標榜する者は闘わなくてはならない。 そのジレンマ、ヒーロー映画の限界をこの映画は図らずも提示してしまって おり、ここにやはりというか、9.11以降のアメリカの迷いというものが色濃 く滲んでいるように思えます。ちょっと取ってつけた感はありますが。 (このラストシーンで、ファンにはちょっと嬉しいお遊びがありますのでお楽しみに) 前後しますが、全体のアクションシークエンスについても徹底的にリアリズ ムを重視するノーラン演出はCGIを極力使わず、ライブアクション、バッ トモービルによるカーチェイスも殆ど実写で描ききっており、ダイナミック さ、重厚さはなかなかのものです。 ただアクション時の画面設計が夜が主体である事から判別し難いという弱み はあります。バットマン意外と弱いし(これもリアリズム?)。 新バットマン=ブルース・ウェイン役のクリスチャン・ベールはかなりハマ り役なのではないかと思います。どこか暗い眼差しの二枚目である彼は、孤 独なお坊ちゃまであるブルースがよく似合います。よくぞ作り上げたという 感じの体重100kg!のボディも壮観。剣劇等もさすがはガン=カタ免許皆伝 だけの事はあるキレでした。 本作は共演が異常に豪華。敵役となるリーアム・ニーソンは非常に重みとキ レのある芝居で役柄に説得力を与えていますし、渡辺謙の異様な存在感も短 い時間の登場ながら印象に残ります。 またブルースを支える心の父親、執事アルフレッドのマイケル・ケイン、ウ ェイン社の変わり者科学者フォックスのモーガン・フリーマンの二人ががっ しりと作品世界の底を支えてくれて安心して観られます。意外の役柄でまた もカメレオンぶりを見せるゲイリー・オールドマンが一番気に入りました。 ヒロインであるケイティ・ホームズは・・・まぁ及第点かな。他の女優でもよ かった気はします。 今回は劇伴がハンス・ジマーになってまして、まぁいつものあのノリですが スケール感もあって映画には合っていました。 ティム・バートン/マイケル・キートンの最初のバットマンの世界では、バ ットマンに扮するブルース自身もまた怪物を心の中に飼っている事が描かれ、 その悲哀、孤独感こそがテーマになっていましたが、このノーラン版では最 初からブルースの理解者であるヒロイン・レイチェルの存在があったりして 彼の孤独・狂気はそんなに強く前面に出ていません。しかしジョエル・シュ マッカーが作り替えてしまった世界観を軌道修正/リセットするには充分な ダークさは持ち合わせていると思います。 何よりも少し俯き加減にシルエットで佇むバットマンのビジュアルは非常に カッコよく、新しいゴッサムシティの世界観も含めて一見の価値はある作品 ではないでしょうか。 公式サイト 因みに冒頭にも書きましたが、タカラからミクロアクションシリーズとして バットマンとラーズ・アズ・グールが発売されます。 詳細はこちら。
by Gun0826
| 2005-07-19 17:28
| Movie
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